パワハラの被害者は、疲労により3倍モードになっているため、怒りの感情に支配され、冷静な判断ができなくなっていることが多い
パワハラの被害者は、疲労により3倍モードになっているため、怒りの感情に支配され、冷静な判断ができなくなっていることが多い
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 もし今、あなたが職場などでパワーハラスメントの被害にあっているとしたら、もしくは身近に見聞きしているとしたら、どのように被害者の「心」を守っていけば良いのか。『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』を刊行した下園壮太さんに、メンタルケアの視点から話を聞いた。

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■半沢直樹のように、相手を完膚なきまでに論破し、土下座させたいけれど……

 私は日ごろから、上司などからパワハラを受けて苦しんでいる方のカウンセリングも行っています。

 苦しい思いをしたパワハラ被害者は、恐怖とともに、強い怒りを感じています。そして、その怒りのままに「相手をやっつけたい」という強い衝動も秘めています。

 さすがに暴力はダメだとわかっているけれど、ドラマ半沢直樹のように、相手を完膚なきまでに論破し、土下座でもさせたい。

 しかし、本当にそれをやってしまったら、現実的な問題解決とはいえない、別の結果になってしまうでしょう。

 一般的に、パワハラをしてしまう上司は、議論が得意な人であることが多いです。上司側にいろいろ非はあるにしても、バトルになったらまず言い負けるでしょうし、運よく一時的にやり込めても、恨みを買います。そして、事態はさらに苦しくなってしまう可能性が高いでしょう。

 もし今まさにパワハラにあっているならば、本人が直ちにするべきなのは相手をやっつけることではなく、加害者から「距離を取る」ことです。

 しかし、被害を受けた本人にとっては、このチョイスは極めて難しいです。

 怒りのスイッチが入った被害者にとって、相手から距離を取るという「撤退案」は、周囲が考えている以上に、受け入れがたい選択肢なのです。

■「労基署に通報したい」という被害者の訴え

 パワハラについて、1つのカウンセリング事例を紹介しましょう。

 あるクライアントには、パワハラ上司と離れるために、人事異動案が提示されました。 

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しかし本人は提案をガンとして受け入れず…