ニシム・オトマズキン教授
ニシム・オトマズキン教授

 空港乱射虐殺事件の後、イスラエルに悲しみと支援の手紙が世界中から届きました。アメリカのニクソン大統領(肩書はいずれも当時)は、この攻撃を「醜い暴力と流血」と呼び、イスラエルを支持していると宣言しました。悲しみの手紙は、3人のテロリストが飛行機に乗って飛び立ったイタリアからも、そして当時イスラエルと外交関係を持っていなかったヨルダンのフセイン国王からも届きました。 日本政府からは佐藤栄作首相が署名し、イスラエルに対する哀悼と支援の意を記した手紙を託した特使が派遣されました。また駐イスラエル日本大使は病院にいる負傷者たちを見舞いました。岡本の父親も、イスラエルのゴルダ・メイア首相に謝罪の手紙を書きました。またプエルトリコでは毎年犠牲者の追悼式が行われています。

 幸いなことに、この攻撃はイスラエルにおける日本人へのイメージに悪い影響を与えていません。イスラエル人は、たった3人のテロリストが日本の人々を代表していないことを理解していました。 攻撃の2日後、メイア首相率いるイスラエル内閣の会合で、閣僚の何人かは、「我々は3人のテロリストを日本国民と結びつけるべきではない。そしてキブツ(イスラエルの農業共同体)には今も日本人学生と日本人ボランティアがおり、 彼らは引き続き歓迎される」と述べています。

 重信の出所によって再び日本赤軍がメディアの注目を浴びるなか、 この教訓を覚えておくことは重要であるかもしれません。テロリズムと殺人は、ロマンチックでもなければ正当化できるものでもない。日本赤軍の物語は歴史の中の悪い痕跡であり、またそのように記憶されるべきでしょう。

○Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年エルサレム・ヘブライ大にて政治学および東アジア地域学を修了。07年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に送られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。12年エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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