世界中でさまざまなテロ事件を起こした過激派グループ「日本赤軍」の重信房子・元最高幹部が、刑期を終えて出所しました。日本赤軍は50年前、イスラエル・テルアビブのロッド国際空港(当時)で自動小銃を乱射し、約100人が死傷する事件を起こしています。イスラエル・ヘブライ大学のニシム・オトマズキン教授によるAERA dot.コラム「金閣寺を60回訪れたイスラエル人教授の“ニッポン学”」。今回は、イスラエル人から見た日本赤軍の謎について。(敬称略)
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日本赤軍の元最高幹部、重信房子が5月28日、20年の刑期を満了し、出所しました。1972年5月30日、イスラエル・テルアビブのロッド国際空港でのテロ攻撃から50年になる、数日前のことです。これは、日本赤軍メンバーで重信の結婚相手でもあった奥平剛士と、安田安之、岡本公三の3人が着陸直後に空港で銃を乱射した事件です。プエルトリコからのキリスト教巡礼団の17人を含む26人の無実の民間人が死亡しました。この出来事はイスラエルのメディアでも大きく報道され、多くの人々に疑問を抱かせました。アジア大陸の反対側の日本からはるばるやって来た人々が、彼らにとって未知の国イスラエルで、無辜(むこ)の見ず知らずの人々を殺害したのはなぜだろうか? これはまだ多くのイスラエル人にとって解けない謎です。
今までこのコラムでも書いたように、現代のイスラエルにおける日本のイメージは過度といえるくらいに肯定的です。ハリウッド映画で描かれた戦時中の残酷な日本兵の描写とは異なり、イスラエルのメディアは日本を文化的にユニークな国、民主主義の擁護者と見なしています。また、日本の経済はとても発展しており、技術力も高く、革新的な国だと高い評価を得ています。最近では、日本のアニメ、マンガ、ゲーム、その他の大衆文化がイスラエルでも非常に人気があり、若いイスラエル人にとって日本は夢のような国でいつか訪問したいと思っています。さらに第2次世界大戦中、ホロコーストから何千人ものユダヤ人にビザを発給し、彼らの人生を救い、家族を救った日本の外交官・杉原千畝の物語もほとんどのイスラエル人は知っています。