■介護費用の準備「1人1千万円」

 さらに近年、準備が必須の費目として注目されている費用に、自分たちの「介護費用」がある。実際に必要になるかどうかはわからないが、「かかる」となるとまとまったお金が必要になる。もはや子供に頼る時代ではないのに、介護費用が入った「家計の長期予想表」を見たことがない。

「1人1千万円程度はかかると思っておいたほうがいい」

 こう話すのは、FPの澤木明氏だ。かつて自分の母親の介護に長期間携わった経験などから導き出した金額だ。

「症状は時が経過するにつれて徐々に進んでいきます。要介護3になったあたりから介護も本格化し、さらに症状が進むと在宅での介護が困難になってきます」(澤木氏)

 介護期間を11年間とした場合に、症状がどう進んでいき、どの年にどれぐらいの費用が必要になるのかをシミュレーションしてみた。確かに要介護1と2の最初の4年間は数十万円で済むが、要介護3以上になると費用が膨らんでいく。

介護費用の例(週刊朝日  2022年6月24日号より)

 施設に入ると毎年、まとまったお金が必要になる。有料老人ホームだと月20万円程度、特別養護老人ホーム(特養)でも同15万円程度かかる。

「このケースは自宅介護が困難になってから、1年間は有料老人ホームで過ごし、それから特養に移る設定にしたため300万円ほど多くかかっています。それを除くと、ちょうど1千万円ほどになります」(同)

「潤い」費用にせよ介護費用にせよ、ここで挙げた金額はすべて今のお金であり、「現在価値」だ。従って、それを「マイ・家計の長期予想表」に入れる場合は、いつごろ必要になるかを予想して、その「将来価値」を計算するのを忘れないこと。

 生活費のほかに「潤い」費用と介護。どうやら「マクロ経済スライド」が続く中での老後生活は「費用地獄」になりそうだ。これらすべてに備えができている家計がどれだけあるか。巨額な必要費用を前に、「老後破綻」の4文字が頭に浮かんだ人もいるだろう。

 そうならないためにも、未来の姿が明らかになった今、できる限りの「備え」を考えなければならない。何ができ、その効果はどれぐらいなのか、あれこれ策を探ってみよう。(以下次号)

(本誌・首藤由之)

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週刊朝日  2022年6月24日号

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