もう一つの王道、男装の麗人系の歴史ファンタジーでは、『リボンの騎士』(手塚治虫)、『ベルサイユのばら』(池田理代子)の流れをくんでいる作品として、倉持さんは『薔薇(ばら)王の葬列』を挙げる。

「シェイクスピアの劇『リチャード三世』がベースになっていますが、斬新な解釈とアレンジがほどこされています。リチャード三世の体は男性でも女性でもある設定なんです。これまで、リチャード三世は見た目も正確もあまりよく描かれることは少なかったのですが、薔薇王では妖艶で男女ともに魅了する主人公として描かれています。ただ、その体ゆえに家族から忌み嫌われ、心通わせる人が現れてもうまくいかず、内なる悪魔に心をとらわれていきます。最後は救われるのか。完結した今、多くの人に読んでほしいです」(倉持さん)

『薔薇王の葬列』菅野文(秋田書店)
『薔薇王の葬列』菅野文(秋田書店)

 新たな流行も誕生している。倉持さんは言う。

「オタクや腐女子(ふじょし)(男性同士の恋愛を扱った漫画などを好む女性)モノは近年のブームですが、最近は1990年代の“いにしえオタク文化”を描いたものが増えています」

『タイムスリップオタガール』は、30歳の腐女子が電車にひかれて、自分の中学生時代にタイムスリップする話。

「30歳の画力や知識をもって、もう一度オタク人生を生き直します。心は思春期ではありませんから、男子から何を言われたって傷つきません。昔は同人誌を販売する交流会に尻込みして参加できなかったけど、それも堂々と参加できます」(同)

『タイムスリップオタガール』佐々木陽子(フレックスコミックス)
『タイムスリップオタガール』佐々木陽子(フレックスコミックス)

 また、その系譜の中で異色の作品も。

『今日からCITY HUNTER』は、80年代半ばに始まったマンガ『シティーハンター』が好きな40歳の女性が、電車にひかれてシティーハンターの世界に迷い込み、主人公の妹分になるという物語。

「原作の絵にそっくりで、ストーリーの流れも原作に忠実ですが、そこにオリジナルの要素が絶妙に組み込まれます。原作ファンを裏切らないクオリティーの高さで、スピンオフの域を超えています」(同)

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