岸田文雄政権の経済政策が「アベノミクス寄り」に映る今、アベノミクス批判を現政権の批判につなげやすい状況にあります。このため、参院選の実質的な論点はアベノミクス政策の是非になり得ると見ています。
アベノミクスは壮大な実験だったと思います。賛否いずれの議論も、これまでは机上の空論でした。なぜなら、私たちはアベノミクスが始まって以来、誰も物価高の世界を見たことがなかったからです。だから、どっちが正しいのか分からないよね、という感覚でした。
私は物心がついてからずっとデフレレジームでした。「明日はもっとモノが安くなる」と信じ、「明日買えばいいや」と思ってきました。それが今は「明日はもっとモノが高くなる」と実感せざるを得ない状況です。
物価高騰のイメージがあるバブル期ですら、平均すると物価上昇率は2%を下回ります。そんな状況の中で「2%の物価上昇率」を目標に掲げ、そこに突き進んでいったのがアベノミクスです。一時的であれ物価が目に見えて上がりはじめた今、これから賃金は上がるか、企業の設備投資は進むか、といったことを具体的に議論できる材料がそろいつつあります。初めてアベノミクスの是非の答え合わせができうる状況が生まれているわけです。
今まさに日本は岐路に立っています。アベノミクス路線の継続でいいのか、立ち止まって考え直すのか。その審判を下す絶好の機会です。
(構成/編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年7月4日号