7月19日、「プロ転向」を表明した記者会見で花束を受け取る羽生結弦
7月19日、「プロ転向」を表明した記者会見で花束を受け取る羽生結弦
この記事の写真をすべて見る

 7月19日、フィギュアスケート選手の羽生結弦(ANA)が記者会見し、競技者としてのキャリアを終える事を表明した。今後は競技会には出場せず、プロに転向して理想を追う。

【写真26枚】羽生結弦 かわいいふくれっ面から「メガネ男子」貴重ショット 

 ここで不思議に思われるのが、フィギュアスケート競技における「プロ」と「アマチュア」の違いだ。会見中、羽生本人も高校野球の例を引いて疑問を呈していたが、何故フィギュアスケートでは「競技会に出場しない=引退」になってしまうのか。

 「プロフェッショナル」という単語を調べると、「1.専門的。職業的。2.専門家。職業としてそれを行う人。」(広辞苑)という定義が出てくる。スポーツ選手に当てはめれば、「興行試合に参加しその成績によって報酬を得、この報酬を生計の中心とする選手」がプロ、という事になるだろう。

 ところが、フィギュアスケートでは、いわゆる「興行試合」というものがほとんど行われていない。競技会は、ISU(国際スケート連盟)を頂点とする各連盟の主催、主管または後援によって開催されており、選手が試合に出場するためには連盟への選手登録が必要となる。大きな国際試合では順位に応じて賞金も出る(2021年の世界選手権シングル金メダリストで64000ドル)が、テニスやゴルフのプロツアーに比べれば微々たる額だ。スケーターが1シーズンに参加できる試合数も限られているため、全ての試合で優勝したとしても、その報酬は前段で定義した「プロ」と呼ぶには程遠い。

 選手登録が無くても参加できる、いわゆる「オープン試合」もゼロではないが、開催は不定期。競技で充分な収入を得ることは到底かなわない。

 少々乱暴な言い方をすれば、フィギュアスケート界においては、五輪を含めほぼ「アマチュアを対象とした競技会」しか行われていないということになる。どれほど好成績をあげてCMなどの副収入があっても、企業からスポンサードを受けていても、連盟に選手登録した上で競技に出場する以上は「アマチュア」。そして、連盟への登録を解除してアマチュアでは無くなると、今度は「出場できる試合が無い」という事になる訳だ。

次のページ
審判員の判定を受けられない「道なき道」