日本山岳会理事で同会遭難対策委員会委員長の川瀬恵一さんは、低山も危険な理由について次のように説明する。
「低山でも山であることには変わりなく、低山特有の危険もあります。登山道以外に、地元の人が利用する生活道や巡視のために付けられた作業道がある山も多く、正規のルートを外れて道迷いに至ることがあります。また、多くの低山は樹林に覆われ、植林地は思いのほか薄暗く、下山の時間が遅れるなどすると見通しが悪くなり、これも作業道などに迷い込む一因となります」
もし、道に迷ったらどうすればいいのか。
川瀬さんは、まず落ち着いて冷静になることが重要とアドバイスする。
「むやみに行動するのではなく、できればザックを置いて、水を飲むくらいの余裕が欲しいです。道迷いの際の原則は、たどってきた道を忠実に引き返し、間違えた地点まで戻ること。そのためには周囲をよく観察して、歩いてきた方向を確認します。また、地図とコンパスを使って、あるいはGPSやスマホアプリで現在地を確認します。引き返す際には、通った道と周囲の記憶を思い出しながら慎重に歩きます」
道に迷ったら、下っていけば何とかなると思いがち。だが、川瀬さんは、そのまま下降を続けることは大変危険だと忠告する。崖や滝が現れ進退窮まることも多く、無理をすれば転滑落につながるからだ。状況を改善できない場合は、救助要請やビバークなどの判断も必要だという。
転倒や滑落した時は、まず現場の状況の把握と周囲が将来的にどのようになるかを予測し、速やかに安全な場所への移動を行うことが重要だ。
「現場の状況や事故者の容体、救助者側の状況などを勘案し、また二重遭難の危険がないよう、今後の事故対応の方向性を決定します。救助には大きく分けて、自力救助(仲間による救助)と救助要請(警察・消防などへの連絡)がありますが、自力救助を選択した場合でもその後の状況により、適切に救助要請に切り替える判断も必要です。安全な登山のためには、セルフレスキューやファーストエイドの講習を受け、技術と知識を身に付けると、より安心です」(川瀬さん)