
■SNSの使用時間が長いと孤独を感じやすい
若い世代が孤独を抱える理由の一つには、日本の若者特有の自己肯定感の低さが挙げられるだろう。18年、内閣府が日本や欧米など7カ国の若者を対象に意識調査を実施。各国それぞれ約1千人が回答したところ、自分に満足しているかとの質問に「そう思う」と答えた人は米国が最多の57.9%、日本は10.4%で極端に低かった。
孤独は、ときに犯罪をも引き起こす。
21年8月の夜、都内を走る小田急線の車内で、男女10人が刺されて重軽傷を負う事件があった。東京地検に殺人未遂の罪などで起訴された男(当時36)は、逮捕時に警視庁の調べに対して、こう供述したという。
「俺はなんて不幸な人生なんだと思っていた」
男は都内の高校を卒業後、中央大学に進むが中退、派遣社員などをしていた。『ルポ 若者ホームレス』などの著書がある大学教員の飯島裕子さんは、
「頻発する無差別殺傷事件の背景には社会的孤立がある。若い頃は、いろいろな期待値が高く、自分が恵まれていないと感じやすい」
政府も危機感は強い。「孤独は社会問題」ととらえ、21年2月、英国に次いで世界で2例目という「孤独・孤立対策担当大臣」を設置した。まだ成果は見えないものの、初の実態調査を実施している。4月に公表された結果によると、孤独を感じる人は、派遣社員や失業中、世帯年収100万円未満といった低所得者層に多かった。
「経済的に困窮すると、たとえば若い人なら飲み会に行けない、高齢者ならば冠婚葬祭のご祝儀や香典が用意できないといったちょっとしたきっかけから、友達や親戚との付き合いが切れてしまうケースがある。それが孤独につながる」(飯島さん)
とはいえ、SNSが発達し、誰でもいつでも、どこからでもつながることができる時代である。なぜ、人はこれほどまでに孤独なのだろうか。『ひとり空間の都市論』などの著書がある南後由和・明治大学准教授(社会学)は、
「SNSの使用時間が長い人のほうが孤独を感じやすい。物理的にはスマホの前に1人でいるのに、SNSの空間上では群衆の中にいる。ふと我に返った時に自己内省的な感覚に陥ることが多い」
と分析。その結果として、
「浅く広い人間関係が漂ってしまう。物理空間でしか満たされない親密性があるということでしょう」
と話す。だが一方で、リアルな関係が密すぎるゆえの窮屈さが、孤独を深めてしまう場合もある。それが、この問題の難しいところだ。