■立ち上げは自然消滅
だが、まず会合の日時の調整から手間取った。みんな仕事を抱えて忙しく、さらに幼い子どもの子育て中。我が子を預けている保育園で置き去りが発生したことにショックはあるものの、年長クラスの保護者の中には、すでに子どもから手が離れているせいか「大したことじゃない」というような反応もあったという。
園側には、保護者が集団化することに抵抗があったのだろうか。園から明確な意見が出されることもなかった。結局、平日の夜に会合を数回開いたものの、立ち上げ話は、自然消滅するかたちでなくなったという。女性は、
「いろんな親、いろんな価値観があることがよくわかった。実現できなかったけれど、他の保護者と話せたのは収穫だった。普段の送迎時は互いにバタバタでゆっくり話したことがなかったから」
と振り返る。
教育現場のPTAや保護者問題に詳しいライターの大塚玲子さんは、
「小中高校のPTAでは、定期的に校長先生と保護者の話し合いを実施しているところがある。まだ少ない事例ですが、なにがいいって、保護者同士の意見交換が行われることです」
と話す。日頃の、学校や園への小さな違和感を言語化してみると、他の親も同じことを考えていたことに気づけるのだ。
「ひとりだとモンスターペアレントだと思われるのではないかなどという不安が先に立ち、小さな違和感にフタをしがち。『うちもそうなの!』という会話ができれば、要望として伝えることができる」(大塚さん)
■立候補制で負担感
一方で、保育園・幼稚園ならではの難しさもある。小中高校に比べて人数が少なく、加えて、みんな“ご近所”なのだ。
大阪市の女性(35)の娘(5)が通う幼稚園には、保護者会がある。役員や行事のお手伝い係はすべて立候補制。女性は平日は、自営業の夫の仕事の手伝いで忙しいため、すべて避けてきた。だが、役員をしてくれているママ友は隣のマンションに住んでいて、園以外でも休日でも、スーパーや公園などでしょっちゅう顔を合わせる。女性は、
「保護者会に、ご近所づきあいも絡む。行事だけ参加して、いいとこどりしていると言われそうで怖い。同調圧力を感じ、今年は何かしらやらざるを得ない。負担感が大きいですね」
とこぼす。保護者が若いせいで、学生時代の部活のようなノリになっていることも気になる。幼稚園からは数カ月に一度、「保護者同士の交流に関するガイドライン」が、送られてくる。