今年4~6月に放送されたドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系、脚本・坂元裕二)は、放送後にSNSでトレンド入りし、インターネット上でもさまざまな考察記事が公開されるなどの反響を呼んだ。作品のメッセージや制作時のエピソードについて、佐野亜裕美プロデューサーに聞いた。(東大新聞オンラインから転載)
【アンケート結果】「テレビを見ていて信用できないと思う人」1位は?
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■「ある事象の裏側では何が起こっているのか」を意識していました
──当初の構想では離婚を3回経験した男性弁護士が主人公だったそうですが、女性の社長とその3人の元夫の物語にしたことなどによって生まれた魅力はどのようなものだったと思いますか
離婚を3回している男性が主人公のドラマを作っていないので、単純な比較はもちろんできないですし、それはそれで面白さがあると思います。社長であることについては、社長という仕事とプロデューサーという仕事はもちろん全然違うんですが、ある組織やグループのリーダーとして引っ張っていくという点では近いところがあると思っていて、プロデューサーとして自分自身が物語を作っていくときに、社長である主人公・とわ子を想像しやすかったんです。とわ子の感じる孤独や組織でどんな問題が起こりうるかなどを想像することで、新たに主人公や物語の奥行きや魅力が生まれたというのはありました。
──どの登場人物も何かしらうまくいかないところを持っている一方で、それが魅力でもあるという奥行きのあるキャラクターになっていますが、それぞれの登場人物の設定はどのように固めていったのでしょうか
主人公を男性から女性に変えることになってからは、松(たか子)さんが演じるならどんな役がいいかという視点で坂元(裕二)さんと考えました。元夫3人も最初は誰もキャストを想定していないキャラクターを仮で作って。3番目の元夫が弁護士という設定だけは残ったんですが、他はパイロットだったり恋愛漫画家だったりと全然違いました。実際に役者さんが決まってから、その方々が今までどんな役柄を演じてこられたか、どういう時に魅力的に見えるか?ということを改めて考えて設定を決めましたね。その中で、役者さん本人が持っている素敵なところを坂元さんに伝えて、人物像に生かしてもらうこともしました。具体的には、控え室での雑談の内容や、親交がある場合はプライベートでどんな振る舞いをしているか、などのことです。登場人物の魅力には演じる上での技能も大きく関わってきますが、それにプラスされるのが、その人が本来持っているパーソナリティーだと思うからです。