安倍氏の訃報を受け来日した米国のブリンケン国務長官
安倍氏の訃報を受け来日した米国のブリンケン国務長官

 さらに、日本の大手メディアの記者の多くは独立の気概に乏しく、安倍氏殺害事件の直後に安倍氏を批判する勇気はない。また、彼らは米国コンプレックスが強く、米国発のニュースの反対の論を書く勇気もない。逆に、今回のように米国に褒められると、劣等感の裏返しで舞い上がり、安倍礼賛の記事にそれらを引用する。安倍氏の外交・防衛政策は米国から見たら素晴らしい。それを米国の主要メディアが礼賛するのは当然だろう。

 以下の点は別の機会に論じることにしたいが、安倍氏のインド太平洋戦略は、米国の対中封じ込め政策と同じ意味を持つ。米中対立の狭間でバランスに腐心するASEAN(東南アジア諸国連合)との連携をより重視する、米国一辺倒ではない戦略もあり得るのだが、安倍氏の政策は無批判のまま高く評価された。

 米国から異常なまでの賞賛を受ける安倍外交の継続が、本当に日本の国益にかなうのかどうか。安倍氏が亡くなった後だからこそ、今一度立ち止まって冷静に考えるべきだ。大きな間違いを犯したと後悔することにならないように。

週刊朝日  2022年7月29日号から

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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