「『中国は役に立つ技術をもつ研究者を引き抜いている』と思っている人もいるようですが、むしろ日本のほうがすぐ役に立つ研究ばかり重視しています。基礎科学の研究はかなり余裕がある国でないとできないので、少子高齢化で財政も厳しい日本で予算が減らされてしまうのは仕方のないことかと思います。すぐに役に立つかどうかわからない基礎科学の研究者が日本ではどんどん追いやられ、中国など海外に行って研究をしているのです」

 日本の大学が研究力を伸ばし、国際的に評価されるにはどうしたらいいのか。前出の角南さんはこう指摘する。

「中国の場合、教員の若返りが大きかったと思います。重点大学を指定して新しい取り組みを始めたときに、海外から多くの教員が帰国し、新陳代謝が起きました。日本は人材の流動性が低く、出身大学に残って教員として学生を教えるということが多い。海外だけでなく、国内でも大学を移動して『武者修行』に行かせ、競争力を高めていく改革が大事かと思います」

(文/白石圭)