自分の働きに応じて目の前で家が完成するので、現場で自分がどういう仕事をしているのかの実感としてはとても分かりやすいですよね。設計士の作った図面を基に、実際に家を建てるためにはどのような資材が必要でどう実現するかについて現場監督と大工が担うのですが、見たままのものが自分の成果として現れます。
また、資材は20~30kgあるものもあり、人力を要する作業が結構多いなと感じました。例えば、大規模なビルの建設は敷地の広さの面でも資金の面でも大型の重機を投入でき、逆に人力で運べる程度の大きさ・重さの工業製品なら工場で大量生産できると思うのですが、住宅くらいのサイズのものの場合、重機を投入することも工場で生産して持ち運ぶということもできません。そのため、家の建築はまだまだ人間のやる仕事という感じですね。特に狭い現場の中で大きな資材を皆で上げなければならないのですが、そういったこともまだロボットには難しいでしょう。
会社自体は10~20戸の規模で同時に建設を進めていたのですが、自分は下っ端だったので人手が足りなければさまざまな現場に駆り出されることもありました。働いていた2年半の間で、合計20戸くらいの建築に携わったと思います。
──社会人の経験をしたことで、働くことや自身の人生設計について考えが深まったりまとまったりした点はありましたか
どんな仕事でも同じだと思うのですが、働きを成果として形にして誰かのためにならないと意味がないということですね。そこが学生時代との大きな違いでしょう。学生なら結果的に失敗したとしても、頑張ればそれで良いという部分がどうしてもあると思うのですが、仕事をして人からお金をもらうということは最終的にちゃんと誰かを喜ばせるという所までいかないと意味がないんだなと気付き、甘えを捨てられた気がします。