撮影:小野悠介
撮影:小野悠介

「作品で地元にお返しをする。十日町でも展示します」

 嶋村さんは「つらさがあるからこそ、幸せをより幸せに感じられる」と言う。

 冬になれば毎日、毎日降り続く雪。農家の仕事もなくなる。週に2、3回はスキー場でアルバイトをする生活。黙々とリフトの雪を払う嶋村さんの姿。そして家の周囲の除雪作業。道路から家までの小道は雪の谷間のようだ。それを広げるため、固くしまった雪によじ登り、切り崩す。

 見るからに大変な力仕事だが、意外にも、嶋村さんはこう語る。

<冬の暮らしが最高ですね。夏は農作業でかなり忙しいのですが、冬は雪と向き合うだけでいい。家族との時間も多くなるし、なかなか出ないお天道様(太陽)のありがたさも分かります>(「市報とうかまち」平成26年12月10日号)

撮影:小野悠介
撮影:小野悠介

 晴れた日はスノーボードをしながら、愛犬「サン」との散歩。日本酒やどぶろくを酌み交わす集落の集まり。年明けには積み上げた稲わら燃やす「どんど焼き」がある。お年寄りだけでなく、若い顔もけっこうある。最近は仲間たちと温泉水からの塩づくりも始めた。

 星降る夜の雪の谷間。その向こうに、温かみのある明かりのともった嶋村さんの家が見える。妻と3人の子どもたちとのだんらん。作品はそこで終わる。

「太陽と月の下」というタイトルには、嶋村さんの暮らしのなかにある「陽と陰」の思いを込めた。

 写真展案内のはがきのデザインは、嶋村さんが販売する茶のパッケージを描いた十日町市在住のデザイナーに依頼した。

「地元のデザイナーさんとも何かやりたかったんです。それに、利島の作品のときは東京で展示しただけで、心残りだったので、今回は作品で地元にお返しをする。十日町でも展示します」

                  (文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】小野悠介写真展「太陽と月の下」
ニコンプラザ東京 ニコンサロン 3月16日~3月29日

十日町情報館 4月3日~4月5日

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