人間関係構築の問題もあります。特に新入生には「横のつながり」が大切ですが、オンラインで交流しようとしても自由に話すことができないため難しいです。経済的・技術的課題も浮き彫りになりました。オンライン教育に必要な電子機器を準備する経済力の有無が、十分な教育機会の保障に影響を及ぼしているのです。さらに、電子機器を用いた指導に必要な技術を持っている小中高教員の割合がOECD諸国の中で最低であるなど日本のICT教育水準が他国より低く、デジタル教育の準備が整っていないことも大きな問題として再確認させられました。

 こうした問題を克服するには教員側の工夫が不可欠です。例えば、授業時間にゆとりを持たせることです。実際に、教員による講義は一部にとどめ、残りの時間は課題を行ったり他の学生と話し合ったりするという形式の授業は学生からの評判がいいようです。私の授業では、授業後に希望する学生は自由に学生同士で話ができる「自由時間スペース」を設けています。同じ授業を受ける学生同士で知識を共有し、語り合うことは教育上も有益であると思います。

 オンラインを使うことで授業の枠を超えた新たな取り組みも可能になるでしょう。先日高校生同士でさまざまな話題について話し合うオンラインフォーラムを開催し、9カ国の高校生が学校や国の壁を越え参加して対話しました。社会人が大学の授業を受講することもより容易になるだろうと思います。

 対面授業を基本としながらもオンラインの利点を教育に最大限生かし、同時に見えてきた課題を解決していく努力が求められます。

*秋田 喜代美(あきた きよみ)教授(東京大学大学院教育学研究科) 
1991年東大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。専門は学校教育学。立教大学助教授(当時)などを経て2004年より現職。19年より教育学研究科・教育学部長。

(文/東京大学新聞社・弓矢基貴、黒田光太郎)

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?