日本の財政の構造は、税収の観点からは「小さな政府」です。しかし支出は中程度の福祉国家。景気拡大期でも恒常的な赤字です。国民はどちらかの国家体制を選ぶ必要があります。私的な感覚としては、国民は増税に対する怒りは大きい一方、年金などの支出削減に対してはそれほど抵抗が大きくなく、小さな政府を指向しているようです。

 コロナ禍に関わらず、時代とともに成長産業は目まぐるしく変化し、経済は変わり続けます。現在勢いのある産業が将来も成長し続ける保証はどこにもありません。

 私からの就活におけるアドバイスは「好きなことをする」ことです。経済学は労働を不効用(苦痛)と見なしますが、好きなことを仕事にする場合は当てはまりません。さまざまな業界で成果を上げる人は概して喜々として仕事をしています。

*植田 健一(うえだ けんいち)教授(東京大学大学院経済学研究科)
2000年米シカゴ大学でPh.D(経済学)取得。大蔵省(当時)国際金融局係長、国際通貨基金シニアエコノミストなどを経て21年2月より現職。

■オンライン授業は教育の大きな転換点

秋田喜代美教授(東京大学大学院教育学研究科)

 本年度から本格的に導入されたオンライン授業は感染対策に有効であることはもちろんですが、通学時間の短縮という利点もあります。それにより学生を含めオンライン利用者の睡眠時間が長くなっていることも分かっています。学生と黒板などとの物理的距離は関係がなくなったため、席の位置にとらわれず授業に参加できるようになったという利点もあります。

 一方で授業に参加している人がその場の雰囲気を感じられず、一体感がなくなるというのは大きな問題です。ビデオをオフにしていると、授業における対話は一層難しくなります。その結果、教員からの「一方通行」の授業になり、学生が理解しているか分からないまま授業が進み所属感も持てなくなります。

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