写真はイメージです(写真/GettyImeges)
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植田健一教授(東京大学大学院経済学研究科)
植田健一教授(東京大学大学院経済学研究科)
秋田喜代美教授(東京大学大学院教育学研究科)
秋田喜代美教授(東京大学大学院教育学研究科)

 2020年に世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症は、医療分野だけでなく教育や情報テクノロジーなどさまざまな分野で問題を浮き彫りにした。21年にはどのような発展が見込まれ、我々はどのように対応していくべきなのだろうか。経済と教育分野の研究者に聞いた。(東大新聞オンラインより転載、一部改変)

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■先行き不透明な経済と就活生の取るべき行動

植田健一教授(東京大学大学院経済学研究科)

 今後の日本経済・世界経済は、ワクチンと治療薬の開発・普及の速度などによって大きく左右され、危機が長引く可能性があります。新型コロナウイルス感染症が終息しても、交通の減少や電子商取引の増加など、デジタル中心の経済構造が社会に定着するでしょう。

 そこで、経済政策の方向性も考え直す必要があります。これまでは、企業や個人は借り入れや預金の切り崩し、政府は低金利での貸し出しや、補助金などの、いわゆる一時的なお金を融通する流動性対策を行ってきました。それをソルベンシー(支払い能力)対策にシフトする必要が出てきています。需要が消えた産業に補助金を出し続けるわけにはいかず、倒産制度を積極的に活用してそのような企業を過重債務から解放するべきです。

 多くの倒産が起こり得ますが、倒産は債務からの救済措置です。特に、企業や家計が通常運営に戻る「再生」の手続きがそうです。もし企業が存続せず「清算」されたとしても、全体の失業率を低く抑えられれば、社会的損失は最小限で済みます。そこで、失業者の転職に際して公的な援助が求められます。

 以前から日本の財政状況は極めて悪く、コロナ禍の影響でさらに悪化する見込みです。本来、いざという時のために、財政に余裕を持たせておくべきところ、アベノミクスの景気拡大時に財政を黒字化させなかったツケが回ってきています。

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