■1つのコツ:「無理強い」はしないがあきらめない
好き嫌いのような本能的な反応には無理に逆らおうとせず、見ただけで嫌がるようなら強制する必要はありません。とくに苦味に対する味覚が育つのはかなり遅いので、子どもが苦い食べ物を嫌うのは自然な反応です。
ただし、だからといって食べさせるのをやめるのではなく、2~3日あけてから、少し味や調理の仕方を変えてもう一度試します。子どもの味覚を育むには、新しい食べ物に親しむことが重要だからです。
ただし、毎回、無理に食べさせようとはせず、食べなくても気にしないで、淡々とくりかえします。
生理学的に味覚が変わり始める10歳あたりになると、コショウや塩、野菜も好むようになってきます。苦味の強い野菜には甘めの味付けをするなどの工夫で、少しずつ味覚の幅を広げていきます。
■味の刺激で「脳の発達」をうながす
食べ物の味は、舌の表面にある味蕾(みらい)という器官でキャッチされ、神経細胞を通して脳に伝えられます。味蕾は8歳から急速に増え、12歳をピークに減っていってしまいます。
味蕾が味をキャッチするたびに送られる信号は脳を刺激し、脳の発達をうながします。脳の発達は、小脳が8歳ごろ、大脳は12歳ごろで完成するといわれています。いろいろな味を経験することで脳が刺激を受けると、「視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚」の五感が研ぎすまされていきます。
食べることは、たんなる生存のためだけでなく、脳の発達にもつながっているのです。
ジャック・ピュイゼは「刺激が乏しくてつまらない食べものは言葉を眠らせ、言語を衰退させる」といっています。また、12歳までに基本の味をきちんと体験していない子どもは、成長してから問題行動を起こしやすいという研究結果もあります。
とくに味蕾がキャッチできるのは、食材そのものの自然の味です。自然の味から基本の「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」の5つの味を見分けるごとに味蕾の数が増え、味覚が鍛えられていきます。
■大人がおいしく食べるのを見せる
栄養のことだけでいうと、嫌いな特定の食べ物を食べなくてもほかの食べ物で代替できるので、好きなものだけでお腹を満たしていても、子どもは十分に育ちます。
とはいえ、味覚は脳の発達にもつながっているので、その意味では子どもがさまざまな味を経験するのは大切なことです。
大人ができるだけいろいろな食材に挑戦し、おいしそうに食べているところを見せると、子どもも新しい食べ物に興味を覚え、チャレンジしてみようという意欲がわきます。
家庭では、親が好きでないものは食卓に上りにくい傾向にありますが、子どもに機会を与えるために、大人もさまざまな味に挑戦します。
好き嫌いを克服するための工夫
・みじん切りにして、ハンバーグやカレーなどに入れてしまう
・子どもの好きなキャラクターのぬいぐるみや人形を使って応援する
・ゆでて苦味を減らす
・苦味や酸味のある食べ物には、甘味や塩味をつける(ホウレンソウにゴマだれ、マーマレードにハチミツ、ゆで卵に塩など)
※管理栄養士・牧野直子氏によるアドバイス。