「驚きと同時に『やっと引っかかってくれた』という気持ちになりました」(ポチ子さん)

 抗菌剤で内膜炎を治した後の2018年秋、8回目の移植でついに妊娠。翌年、めでたく女児を出産し、ブログを閉じた。

「のんびりせずにもっと早く妊活に踏み出せば良かったと今も思います。不妊治療は精神的にも金銭的にも負担が重いですから、夫婦で足並みをそろえて乗り越えていくことが大切だと痛感しています」(ポチ子さん)

 政府は12月4日、体外受精や顕微授精を含む不妊治療への保険適用を2022年度から始める方針を表明した。実現までの間、既存の助成制度を拡充する。

「夫婦合算で730万円未満」だった所得制限を撤廃し、「初回上限30万円、2回目以降15万円」だった助成額の上限も「2回目以降も30万円」に引き上げる。

 ポチ子さんも、第1子を授かるまでに助成制度を5回利用した。

「治療を受ける度に、通帳の残高がガンガン減っていくのを見て何度も震えたので、支援拡充の話は本当にありがたいです」(ポチ子さん)

 夫婦は今後、2人目の妊娠を望んでいるという。

「凍結保存している胚の移植が陰性だった場合、もう一度採卵することも視野に入れています。年齢もあり1人目の時のように何度も治療を繰り返すことはしないと思いますが、この先、高額な治療費のために治療を諦めなければいけない方々の負担が軽くなるのはうれしいです」(ポチ子さん)

 ポチ子さんのブログからは、不妊治療における「病院選び」の難しさも浮かび上がってくる。

「とにかくネットの情報を読みあさりました。口コミサイトに、病院のホームページ、そして実際に通院している方のブログ……知識のない状態で、あちこち検索したので、一つの病院に決めるまでが大変でした」(ポチ子さん)

 不妊に悩む人を支えるNPO法人「Fine」の調査によると、病院選びに迷った経験がある人は約8割に上り、転院を経験した人は半数を超え、そのうち約7割がポチ子さんのように、2回以上の転院を繰り返していた。

 ブログにも病院に関する情報が多く寄せられた。ポチ子さんは「口コミは有力な情報源」としたうえで、「同じ病院でも人によって合う・合わないがあるので、全てをうのみにしないよう気をつけてほしい」と話す。

 不妊治療は時間との勝負でもある。日本も欧米にならい、各病院の治療成績を国や第三者が管理・公開するシステムを作り、患者が不利益を被らないようにすべきだろう。

「体外受精の治療成績を、できれば年代別に一覧になって公開されていると、もっと選びやすいとは思います。でも、私自身は、子どもを授けてくれた医師と病院には感謝しかありません」

 ポチ子さんがもっとも必要と考えるのは、繰り返すが、夫の理解である。

「不妊治療は、女性任せにするのではなく、できれば夫婦で一緒に初診を受け、男性も治療への覚悟を持ってほしいです」

(文/アエラムック編集部・曽根牧子)

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