一方、関東地方の住宅は、関東大震災の経験から屋根を軽くしているため、比較的地震に強い傾向があるそう。

「ただ、関東地方の住宅は耐震力がある半面、台風に弱いという特徴があります。そのため、2019年の台風15号のときのように、千葉県では大規模停電や建物損壊などの被害が出てしまいました。想定と異なる災害が起きると、被害が大きくなってしまうのです」

■在宅避難に必要な3つの条件

 いざ被災したときに「避難所に行く」か「在宅避難する」か、どちらかの選択を迫られる。松本氏は、以下の3点の安全性が確保できない場合は「在宅避難ではなく避難所に行ってほしい」と見解を示す。

1:土地の安全
2:家の安全
3:部屋の安全

 まずは、今住んでいる土地の安全を確認する必要がある。その指標になるのが「ハザードマップ」。ハザードマップとは、過去の災害の知見から、自然災害時に被害が発生する地点や被害の規模、避難場所などの情報が記載されている地図だ。

「ハザードマップは、自治体によってマップの表記や種類が異なります。マップの種類がひとつの地域もあれば、一級河川の多摩川がある世田谷区のように『多摩川洪水版』と『内水氾濫・中小河川洪水版』が別になっているケースもありますね」

 内水氾濫とは、マンホールから下水があふれることを指す。世田谷区に住んでいる人は多摩川洪水版だけでなく、「内水氾濫・中小河川洪水版」のマップも注視する必要があるという。

「とくに都会の下水や中小河川は、集中豪雨の場合、雨が降り出してから約1~2時間ほどであふれてしまいます。地形や条件によっては、30分ほどで一気に浸水する地域もあります。ハザードマップが複数ある場合は、どちらもしっかり確認しましょう」

 また、ハザードマップは頻繁に改定されるため、こまめにチェックしてほしい、と松本氏。災害を経験するたびに土地が抱えるリスクも変化していくのだろう。

「台風や豪雨が発生したときは、情報の入手や周辺観察を心がけましょう。ハザードマップで自宅近辺に浸水や土砂災害のリスクがあることを事前に知っていれば、早めに避難できるはず。ただし、夜間の避難や水が膝上まで深くなっている場合の移動はNG。急な浸水で避難ができなくなったら、建物の2階以上の高い場所に逃げましょう」

 タイミングの見極めは難しいが、自分の地域に「避難指示」が出た場合は、コロナ禍でも迷わず避難所に行くのが鉄則だという。

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家の安全性の判断は新耐震基準で行う