売り手市場のなかでも、大学ごとに企業との相性があることがわかる。
たとえば、一橋大学。
1学年の学生数は1千人に満たないながらも、三菱UFJ銀行に22人、三井住友銀行に17人の学生を手堅く送り込んでいる。
だが、調査を実施した大学通信の安田賢治常務は、こう話す。
「この102社の中で、一橋大生が最も就職しているのは楽天の29人です。他のネットや通信系に進んでいるわけでもない。創業者の三木谷浩史会長が一橋なので、その影響もあるのではないでしょうか」
赤や青色が目立つ大学は、企業からターゲットにされている大学といえる。たとえば、保険は早慶MARCH、理工系を中心にほしがる電子・電気は難関国立大など、企業や業界の傾向がひと目でわかる。一方、学生に人気の食品は採用数が著しく少ないことなども見て取れる。
「キラキラ就活」の終焉
アフター・コロナとなる21年卒もターゲットが大きく変わることはないが、就職地図が一部、変わることが予想される。
「売り手市場は20年卒まで。学生に人気のキラキラ企業が並んだ進路実績は、おそらく最後の輝きです」
そう話すのは、青山学院大進路・就職センターの西前(さいぜん)敦子課長だ。航空業界を目指す学生が多い同大では、今年4月、日本航空と全日本空輸だけでも70人以上の学生が採用された。中には、入学時からエアラインスクールに通ったり、夏のインターンシップに参加する学生が多かったという。
2社とも青学からの就職先上位企業で、採用実績は右肩上がりだった。納得して就職していく卒業生の姿に手ごたえを感じていたが、新型コロナによる渡航制限で航空業界は赤字に転落。相次ぐ採用中止で21年卒生は土俵に立つことすらままならなかった。早くも卒業延期や、既卒での就活を意識する学生も出てきている。
だが同センターの祖父江健一部長の「読み」は、さらに重い。
「航空業界は少なくとも3年は元通りにならないと見ています。リーマン・ショックは原因がはっきりしていたので1、2年先には希望が持てました。先が読めないコロナ禍で学生にどうモチベーションを保たせるか、我々の支援も問われます」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2020年10月26日号「人気102社の採用したい大学」特集から抜粋