そこで元に戻るのだが、


「やはり炒め物は鉄製なのでは」
 という考えが頭に浮かんできた。しかし鉄製は油ならしが必要だし、さぼるとすぐに錆が出たりこびりついたりする。そこのところをクリアできるものはないのかと、またまた調べた結果、何と、油ならし不要の鉄製のフライパンがあるではないか。それも作っているのは、私が長い間使っていたステンレス鍋のメーカーだった。こんなことがあるのかしらと、鉄製のフライパンで面倒な油ならしがいらないなんて素晴らしいと購入した。しかし封入されていた取扱説明書には、
「油ならしをしてください」と書いてあった。
「あれ? 話が違うんじゃ……」

 読んでみると、本来の鉄製フライパンの油ならしに比べると、格段にあっさりとしたものだった。フライパンに油を大さじ三~四杯ほど入れ、弱火で三分ほど加熱。火をとめて油を別の容器に移し、キッチンペーパーなどでフライパンに残っている油を、すり込むようになじませて終わり、やってみたらあっという間に終わった。最初は調理後にお湯とタワシで洗い、水気を拭いて油をすりこむのを続けていた。それだけはやっていたが、その他は何もしていないのに、炒め物をしてもこびりつかないし、おまけに軽い。厚手であれば熱伝導の効果があるので、料理によってはいいのかもしれないが、別にステーキを焼くわけではないので、野菜炒め程度だったら、薄手のもので十分だった。

 昔はひとつ便利な部分があると、他の部分で気になるところがあったりしたけれど、技術の進歩のおかげで、いいとこどりができる調理器具が出回っているのがわかった。ノンスティックのフライパンは、卵焼きやそば粉のクレープを焼くのに使っている。同じものを長く使い続けるのもいいけれど、少しでも日々の調理が楽になるように、新しいものを探してみるのもいいのではないかと思う。

※『一冊の本』2020年1月号掲載

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