今春、娘が就職で家を離れ、夫と2人、そして1匹の生活になった。
いつかはこんな日が来るとわかっていたものの、2人とも寂しさは隠せない。お互いに日頃から会話もしているし、生活のリズムもそれほど変わらないのに、どこかにぽっかり穴があいている気がする。
それは愛犬小梅(写真、雌)も同じだったようだ。落ち着かなくなった。
もうすぐ中学生という頃、「猫を飼いたい」と言いだした娘。それが急にやっぱり犬と言って、ペットショップでひとめぼれしたのが小梅だ。
小梅も娘にはいつも一目おいていた気がする。
もやもやとした気持ちをどうすることもできないでいる私たちを尻目に、娘のいない寂しさにいち早く慣れたのは小梅だった。
穏やかで吠えることが少なく、ツンデレだけど甘えん坊。そんな性格は子犬の時と変わらないが、ふと見ると、ひげは白く短くなり、ゴロンと横たわって寝ている時間が多くなった。
犬も人間も、同じように年をとる。私たちは、日々、「体のここが痛い」だのなんだのとぶつくさ文句を言うが、小梅は加齢による変化にも静かに向き合っているように思う。潔い。
犬の11歳は人間でいうと60代半ばとか。いつの間にか小梅は私たちの年齢を追い越してしまった。
日々のどうすることもできない不安や寂しさに心が揺れる時は、小梅の体をなでる。目を閉じ、幸せそうな表情をする小梅を見ていると、次第に心が静かになってゆく。
なるようにしかならん。今の生活を大切に日々を過ごしていこう。何事にも動じず、のんびりと構えている小梅がそう言っているような気がする。
(塚田有里さん/京都府/53歳/パート)
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