写真家の浅田政志さんと編集者の藤本智志さんが『アルバムのチカラ 増補版』(赤々舎)を出版した。初版(2015年)は東日本大震災の津波によって流出した写真を救済するボランティア活動を追った写真集であり、本書では新たに平成30年西日本豪雨被害における活動の様子を収録している。浅田さんに聞いた。
明るい黄色い表紙の写真集を手にとり、新たに追加されたページからぱらぱらとめくってみた。扉には「アルバムのチカラ、再び」とあり、「真備洗浄へ」「どこよりも明るい現場」という大きな文字が目に飛び込んでくる。そこには増補版を出すにあたり、岡山県倉敷市真備町の現場を追加取材したいきさつについて、藤本さんがこう書いている。
<2015年に初版を出版した本書『アルバムのチカラ』は、単なる震災復興の記録ではなく、写真そのものの意義を問う一冊だったように思います。出版から5年、東日本大震災から8年以上が経ついま、あらためて本書を増刷するにあたり、僕はどうしても追加取材をしたいと思いました。それぞれの地域のみなさんが試行錯誤しながら確立してこられた写真洗浄のノウハウが、現在に活かされているかどうかを知りたかったからです>
「あ、あった! これが娘!」
「喜ぶわ、ありがとうございます……」
写真は真備町南部の交差点から始まる。画面右にテレビで何度も見た鉄道の高架橋が写っている。被災当時、ここが完全に泥水の沈んだ地域だったことを思い出す。隣の写真は活動の拠点となった集会所の入り口。そこに掲げられた暖簾に、濃い青地に白く「真備洗浄」と力強くあるのが印象的だ。
部屋の中に入ると、白いプラスチック製のたらいがいくつも机の上に並んでいる。泥まみれの写真を水に浸し、汚れを少しずつ落としていくボランティアの人たちの手。洗浄が終わり、きれいになった写真が手前の乾燥ラックに立てかけられている。仕上げた写真をポケットアルバムに入れる女性の笑顔。
とても繊細な、手間のかかる作業なのだろうなあ、と思いつつ、写真から伝わってくる前向きな明るい雰囲気にほっとする。
自宅の2階の上まで泥水に浸かったという林さん夫妻が娘の卒業アルバムを引き取りに来た場面が描写されている。アルバムを見開き、「あ、あった! これが娘!」と声をあげる夫。「喜ぶわ、ありがとうございます……」と涙ぐむ妻。
――どんな人が写真洗浄の活動に携わっているんですか?
「ふだんはカメラとか写真にまったく関係ない人ばかりなんです。でも、みなさんの写真に対する愛情というか、熱意というか、向き合い方がほんとうにすごい。尊敬する人ばかりです」
と、浅田さんが説明する。
「写真は本当に一枚しかないから、それが作業ミスで画像が消えてしまうということだけは避けたいんです。なので、パパッとはできないんですよ、この作業は」
本書の最後には「写真やアルバムが被災したときは」というページが設けられ、水没した写真を救う方法が詳細に書かれている。今後も起こりうる自然災害に備えて、これまでに蓄積した写真洗浄のノウハウを残したいという思いが伝わってくる。