コンテストの主催者には当人やファイナリストの成長だけではない、コンテストの公共的な意義を説明することが求められる。「例えば東京大学総長賞という学生表彰も、学生を評価し順位付けする行為の一つですが、公共的価値に訴えているために認められているのです」。コンテストは「一部の人が盛り上がっているもの」というイメージが強いが、「皆が楽しめるもの」でなければ公共的価値が高いとは言えない。
一方でコンテストに反対する立場の人も、自らの意見を絶対視せず賛成派の声に耳を傾ける必要がある。「被害者の声が受け入れられやすい世の中になってきていますが、被害者のリアリティのみが絶対だという立場で他者の自己表現の場を奪うことを正当化すると、対話の公共的価値が毀損されます。両者とも、根本的に意見の違う相手としっかり対話する姿勢でいることが大切です」
梶谷 真司(かじたに しんじ)教授(総合文化研究科)
1997年京都大学大学院博士課程修了。博士(人間・環境学)。帝京大学准教授、総合文化研究科准教授などを経て、2015年より現職。
赤川 学(あかがわ まなぶ)教授(人文社会系研究科)
1999年人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。同研究科准教授などを経て、2019年より現職。
(文/東京大学新聞社・武沙佑美)