20代前半にハマった多肉や、最近好きなアンスリウムも、今育てているのは「原種」が大半を占める。「より自然」なものが杉山さんをとりこにする。
「品種改良種が悪いというわけではないですが、自然界にはないものですよね。丈夫で強い原種の正しい姿を見たいという気持ちがあります」
仕事で出かける海外などでもそういう大きな植物が自生しているのを見に行くのが好きだという。
植物の魅力を漫画に
あふれる植物愛を漫画にした人もいる。
『タニクちゃん』(全3巻)は、34歳で独身、彼女なしの主人公・花田章が、突然、母親が経営する多肉植物専門店を任されるところから始まる「ドタバタ植物コメディー」だ。エケベリアやセダムちゃん、コノフィツムなどのタニクキャラが喋り、動き回る。
「偏見よ! 植物はじっと動かないとでも!? 植物だってゆっくりだけど成長して動いてるんだからね」
などの植物が放つセリフに、クスリとさせられながらも、ハッと気づかされることがある。
作者はよねまるさん(32)。5年前の姉の誕生日、社会人になり忙しく働いていた姉に手のかからない多肉植物をプレゼントしようと調べたことがきっかけだった。ネットで見たカランコエに一目惚れし、お店に行ってみると、個性的な姿の多肉がたくさんあったと言う。
それまで興味もなかったが、葉っぱが分厚くてプニプニしている、作り物みたいな不思議な多肉たちに心引かれた。
「なんでこうなった、みたいな形のものが多くて。動き出しそうだな、と」
そこから“漫画化”を思いついた。
図鑑などの資料を読み込み、得た知識を漫画に反映していった。多肉を育てたことのある人ならわかる喜びや失敗が共感を呼び、漫画は多肉初心者からも好評だ。
よねまるさん自身が今育てているのは、オベサ、ハオルチア、臥牛(がぎゅう)など。
「オベちゃん」「ハオ様」と親しみを込め、部屋で一人で仕事をしている間「疲れたね」などと話しかける。
「植物の表情は変わらないけど、実は感情豊か。嬉しいと生き生きしています。それが読み取れたときは嬉しい」
(編集部・高橋有紀)
※AERA 2020年8月10日-17日合併号