函館の写真は、函館競馬場に近い湯の川線の駒場車庫付近で行き交う3系統十字街行きと湯の川行きの市電だ。函館市電は経営合理化のため、1968年6月からこの3系統でワンマン運転を実施している。
■名物ササラ電車の里帰り
最後のカットは、北国の風物詩ともいえる函館市電の「ササラ電車」が都民に披露されたイベントの一コマだ。2011年8月に創業100周年を迎えた東京都交通局が、記念特別展「東京の交通100年博~都電・バス・地下鉄のいまむかし~」を2011年7月14日から江戸東京博物館で開催した。その目玉展示物である「函館のササラ電車」が、76年ぶりに里帰りして話題となった。このササラ電車の出自は旧東京市電の「ヨヘロ型」で、1934年3月に発生した函館大火で多くの車両を失った函館市電が、東京市電から急遽購入した45両の中古車両の中から、ササラ電車に改造された一台であった。大正初期の車体構造を今に伝える貴重な車両で、博覧会終了後は函館に戻り、現在も冬季除雪の任務に就いている。
2001年に札幌市電と函館市電は「北海道遺産」に選定された。札幌市電は新たに都心線をサイドリザベーション方式で敷設して、環状運転が実現している。函館市電も「函館ハイカラ號」運転に代表される観光客誘致に力を注いでいる。
■撮影:1967年10月3日
◯諸河 久(もろかわ・ひさし)
1947年生まれ。東京都出身。写真家。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。著書に「都電の消えた街」(大正出版)、「モノクロームの私鉄原風景」(交通新聞社)など。2019年11月に「モノクロームの軽便鉄道」をイカロス出版から上梓した。
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