女性ファッション誌「LEE」2019年10月号ラジオ特集で、「好きなパーソナリティー、DJ」女性編の1位に。ちなみに男性編1位は星野源(撮影/今村拓馬)
女性ファッション誌「LEE」2019年10月号ラジオ特集で、「好きなパーソナリティー、DJ」女性編の1位に。ちなみに男性編1位は星野源(撮影/今村拓馬)

 だから番組を降りようと思った。が、一方で、すぐにはやめられない事情もあった。瀧の「降板」を決めるのは、会って直接話してからにしたい。だからそれまで、代わりのパートナーを毎週よび、番組を回そう。編成や営業に迷惑をかけると思いながら、その意思だけは通したのだ。

 その間、あれこれ考えた。自分を立たせるとは、どういうことか。「自己肯定感」が話題になっているから、そういう本も読んだ。しばらくして、一つの結論に行き着いた。何が起きても自分の人生は自分でなんとかする。それが、自己肯定感ではないか。人生は、これからも何が起きるかわからない。だけど、何か起きても自分で何とかする。最初からそう決めておこう、そう決めた。と思った瞬間、不思議と自信がわいた。

「自分の人生に、自分であかりを灯す。自分で自分のことをすればいいんだから、私、できるわ」

 そう思ったんです、と赤江は言った。

 自分のことを「ああだこうだ考えるのが、すごく好き」と言うだけあって、赤江は内省的で、分析的だ。阿部が「赤江さんは、表現したい人なのだと思う」と言っていたと告げたら、次に会った時、「そう言われて考えたこと」を話してくれた。

 さまざまな分野の仕事をしたが、放送という表現の中でアナウンサーに求められる感性はいろいろある。報道は怒り、情報番組は誠実さ、スポーツは歓喜、「たまむすび」のようなバラエティーは癒やし。それぞれ違う感性だが、いずれにしても「そうそう、そう言ってほしかった」と思われた時、いい放送になる。そういう分析だった。

「羽鳥慎一モーニングショー」のコメンテーターでテレビ朝日報道局の玉川徹(56)は、「スーパーモーニング」以来の同僚である赤江を「メディア人」という視点で語った。「ちょっと昔は誰にでもあって、いま崩壊しつつある良心、良識を、ちゃんと持っている人だと思います」

 愚痴を言わない、悪口を言わない。番組を良くするための前向きな話ができる。そういう人だから時々食事にも行ったと言い、続けたのが代官山で待ち合わせをした時のエピソードだ。

 時間通りに行ってもいない。と、思ったら実はいた。ラスタ帽をかぶっていたから気づかなかった、男の人だと思った。そう楽しげに語り、赤江を「ひょいひょいと行けば、良い結果がついてくるような人生じゃないかなあ」と言った。

 それは運ということですか、と尋ねたら「運ねえ」と少し考え、こう言った。「確かに運って、邪悪な考えとか持ってると、こないよね」

暮らしとモノ班 for promotion
なかなか始められない”英語”学習。まずは形から入るのもアリ!?
次のページ