「うれしい悲鳴、珠緒、感激、まさかこんなに来てくださるとは思ってなくて」。2千回の放送はそんなふうにスタートした(撮影/今村拓馬)
「うれしい悲鳴、珠緒、感激、まさかこんなに来てくださるとは思ってなくて」。2千回の放送はそんなふうにスタートした(撮影/今村拓馬)

■明解な番組コンセプト、ホスピタリティーを体現

 でも、他にも何かあったような。そう思った方のために、「たまむすびすごろく」に戻る。72マス目にこうある。

<赤江&大吉、芝生で寝転がって花見をしている姿を「FRIDAY」に撮られる。1つ前のマスに戻り内容に従え!>

 指示に従い、一つ前のマスに戻る。
<ピエール瀧(ウルトラの瀧)、違法行為でお縄になる…。振りだしに戻って正座で10回休む!>

 念のため説明すると、博多大吉&ピエール瀧は「たまむすび」のパートナー。月曜から木曜まで日替わりのパートナーが、赤江と話す。赤江の「たまむすび」は、いわばそれだけの番組だ。

 71と72マス目は、どちらも19年春の出来事。3月に瀧の逮捕、そのことを大吉と話していて写真を撮られたのが4月。赤江は17年7月、42歳で長女を出産、産休から戻ったのが18年4月だったから、復帰1年足らずでの激震だった。

 でも、だからこその、“3500人”だったのでは。そう語るのは、「たまむすび」プロデューサーの阿部千聡。16年、放送千回の時も「オリジナルポスター無料配布」のイベントをしたが、集まったのは800人。番組の内容はほぼ同じなのに、4倍以上集まった。

「励ましたいとリスナーが思ってくださったんじゃないでしょうか。たまちゃん、がんばって、私たちがついてるよ、って。そんな気がします」

「たまむすび」のコンセプトは実に明解、「赤江さんみたいな雰囲気を体現する」だと阿部は言う。「重要な情報は一つもない。でも、聞いた人には楽しんでもらう。ホスピタリティーっていうんですかね、それが赤江さんの性格だと思うんです」

 阿部が赤江を一番尊敬するのは、「着地がわからないのに飛べる」ところだという。似てない物真似もする、知らない歌を歌う。オンエアというスイッチが入れば、やってしまう。そういう女性アナウンサーはそうはいない、と阿部。

■自分に誠実だから悩む、その「揺れ」が共感される

 赤江のABC時代の先輩、アナウンス部部長の加瀬征弘(55)の話と重なった。

 入社した年の夏の甲子園。アルプススタンドからの中継で、赤江はいきなり靴と靴下を脱いだ。裸足になり、「アチ、アチ」と暑さを伝えた。手で触ってもいいのに、裸足。「意味わからないじゃないですか。でも面白いじゃないですか」と加瀬。赤江はその後、テレビ、ラジオの甲子園実況を担当。両方担当した初の女性アナウンサーだ。

「24時間ついていたわけではないですが、どれだけ練習したことか。そうでないとあんなにしゃべれません。いろんなことを犠牲にしたと思います」

 そんな赤江だが、「たまむすび」におけるキャラは「ポンコツ」だ。その一端を、ある日のやりとりで紹介する。パートナーは山里亮太。

 赤江 重い家具を動かすもの、最近いろいろありますよね、「コテ」を応用して。

 山里 赤江さん、それ「てこ」だよね。

 記憶だけで書いているが、まあ、こんな調子。番組には、赤江の「失敗、やらかし」をまとめて振り返るコーナーさえある。

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