鉄道写真家・米屋こうじさんの写真展「鉄道幻風景」が7月29日から東京・丸の内の富士フイルム Imaging Plaza東京で開催される。
米屋さんにインタビューすると、アジアの列車旅に誘われた。
「上海発、北京行きの普通列車。27時間。以前、乗ったら、なかなかよかったんです。今度、一緒に行きませんか?」
好きな列車は「特急や急行じゃなくて、駅ごとに地元の人が乗り降りする各駅停車」「しかも長い距離を走るやつ」。ただ、「それを探すのが大変で。外国人の目には触れないようなところにひっそりとあるんです」。
「まず、日本みたいにローカル列車まで載っている緻密な時刻表があまりない。東南アジアの国だと、そもそも刷り物になっている時刻表が少ないんです。現地の駅に足を運んで、切符売り場に掲示してある時刻表を見るまでわからない。だから、入国後の予定はいつも未定です」
窓が開く列車、というのもポイントだ。
「エアコンのついた車両は快適ですけれど、印象が薄いんです。窓が開いていると、風が吹いてくる。その土地の空気を感じられる。湿った空気や田んぼのにおい。駅に止まると、物売りの人が窓越しにやってくる」
今回の写真展では「昔の雰囲気の鉄道が残る」スリランカ、ベトナム、バングラデシュ、ミャンマーで撮影した写真を展示。作品からは沿線に暮す人々の濃密な空気感が伝わってくる。
雄大な茶畑を走るコロニアル風の鉄道
まさにカオス、強烈なインパクトのある写真はバングラデシュで撮影したもの。武骨な列車の上には人人人。機関車の正面にもびっしりだ。
毎年1月、首都ダッカ郊外のトンギではイスラム教の巡礼祭「ビッショ・イジュテマ」が開催される。メッカ巡礼に次ぐ規模のイスラム教の大イベントだ。
「ものすごい人。会場に入れなくて駅でお祈りをする人もたくさんいる。で、お祈りが終わるとみんないっせいにダッカに帰っていく。長い編成の臨時列車を大増発するんだけど、超満員。乗り切れない人が屋根の上に。最初は警官みたい人がやって来て、屋根の上の人に向かって『降りろ、降りろ』と叫ぶんですが、だんだんそんなことは言っていられない状態になって、走り出す……」