そう説明するのは、同大学言語教育研究センターの藤田保センター長だ。国際性を特徴とする同大では、11年からコンテストを実施。これまでに2千人以上の高校生が応募してきた。
英語の弁論大会というと、海外経験が長い生徒の参加に制限がかかるケースも多い。だが、ジョン・ニッセル杯にはそうした縛りはない。日本から一歩も出たことがない高校生も帰国生も、同じ土俵で戦うのが特徴だ。
「発音だけを取り上げれば、海外経験が長い人が有利になります。英語の審査はもちろんありますが、言語そのものより、そこで語られているメッセージを重視しています」(藤田さん)
昨年度のスピーチテーマは、「New Connections Beyond the Pandemic(パンデミックの先にある新しいつながり)」。270人を超える応募者の中から、15人の高校生が本戦に出場した。コロナ禍の影響でオンライン開催となったが、画面越しに熱気が伝わってくる。
応募者の13%が進学
「あのレベルの高校生が一堂に会し、新鮮な考え方や感じ方に触れられるのは大学としても刺激的です。一回体験するとやめられません」
と藤田さん。参加者にもその熱量の高さが伝わるのか、大会応募者のうち13%が上智大学に進学しているという。
大会の成績で入試が優遇される制度はない。だが、15年からは上位入賞者が同大に入学した場合に利用できる奨学金を導入。20年には、「4年間の学費免除、減免」も加わった。
「各大学が広報活動をしていますが、実際に入学してくれるかは別問題というのが現状です。でも、この大会に参加した人の多くが上智に出願し、受かれば入学してくれるという実績があります。優秀だという前提があったうえで、大学側も学生募集の観点でも意義があると考え、奨学金の充実にもつながっているのだと思います」(藤田さん)
(編集部・福井しほ)
※AERA 2022年7月11日号より抜粋