「自分にとってネガティブなものも受け入れることができるようにならないと本人もつらいし、社会全体としても不幸になっていく」と與那覇さんは強調する。

「3.4の飯」という感覚

 さらに、データや数字だけが重要なものとされ判断の根拠とされるとき、抜け落ちるのは、人と人同士の、個別の関係性が反映された評価だ。

 食べログはレビュー件数の多いユーザーの評価に重みをおいているが、

「具体的な関係性を伴った友人からの評価であれば、ラーメン好きで詳しい人と滅多に食べない人と、どちらの評価もアリなはずなんです。いつもはラーメンを食べないあの人が『でもこの店のは旨かった』と言うなら行ってみようかな、と思うこともありますよね」

 SNSを開けばプロフィル欄に政治信条や病歴までがその人の「個性」であるかのように「タグ付け」されている。與那覇さんは、「世界のあらゆるものにタグがついている状態」だと嘆く。それは食でも展開されている。

「自分は今3.4の飯を食っている」。そんな感覚で食べる料理は、はたして豊かな食事と言えるのだろうか。

(編集部・高橋有紀)

AERA 2022年7月11日号より抜粋

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