市村:映画は去年3本やりましたよ。「そして、バトンは渡された」と「劇場版 ルパンの娘」と「燃えよ剣」の3本。それとNHKの「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」。

林:えっ、中村仲蔵を?

市村:中村仲蔵は中村勘九郎ちゃんで、僕は四代目市川團十郎をやったんです。七之助君や(尾上)松也君とか、歌舞伎俳優がいっぱい出て。

林:そうなんですね。歌舞伎の人に交じって團十郎の役をやったんですか。

市村:玉さん(坂東玉三郎)にほめられました。「歌舞伎になってる」って。歌舞伎を40年ぐらい見てきたからかな。(片岡)仁左衛門さんの「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」で花道のところで(目を見開いて)カーッとやるところとか、十七代目、十八代目の勘三郎さんの芝居とかも見てるし、先代の(中村)雀右衛門さんの「葛の葉」も見てるしね。

林:いま市村さんが「カーッ」とやった顔、文楽のお人形の顔になってました。

市村:僕、文楽も大好きなんですよ。役者って人間の心を持ってるから欲があるんです。だけど、文楽って人形だから、欲を出せないんだよね。操ってる人を見るのも勉強になるし、人形を見て、こういう芝居をしなくちゃいけないなと思うんだよ。

林:私、文楽って見たことなかったんですけど、この前直木賞をとった『心淋(うらさび)し川』(西條奈加)は文楽のことを書いてたので、女性の作家たちと文楽を見に行ったんですよ。おもしろいなと思いました。

市村:でしょう? 語り手の太夫さんが一人何役もやって、人形を3人ぐらいの人が操るじゃないですか。あのバランスがいいんですよね。

林:市村さんの中にはいろんなものが詰まってるんですね。

市村:いいものを見ると、それが自分の財産になるでしょう。「ここはあのとき見た浄瑠璃でいこう」とか思うんです。

林:そうなんですか。でも、これだけいろんな役をおやりになったら、もうやりたい役ないんじゃないですか。

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