市村正親さん(左)と林真理子さん(撮影/写真映像部・高野楓菜)
市村正親さん(左)と林真理子さん(撮影/写真映像部・高野楓菜)

市村:このあいだ「オリバー!」のフェイギンをやったとき、いよいよ僕も「リア王」かなと思ったの。アンソニー・ホプキンス(84歳)の「リア王」の映画を見たときも、そろそろ僕も「リア王」をやれる年齢になってきたなと思った。腰が悪くならないうちにやらなくちゃいけない。

林:この前、松本白鸚さんの「ラ・マンチャの男」が、コロナで残念ながら途中で中止になっちゃいましたけど、白鸚さんはおいくつでしたっけ。

市村:79(歳)ですね。僕、73。

林:まだ6年もあるじゃないですか。私、このあいだ仲代達矢さん(89歳)の舞台(「左の腕」)も拝見しましたけど、ちゃんと主役をなさってました。

市村:ですよね。僕が大好きな島田正吾先生(新国劇)に出会ったのが、彼が89(歳)のときなんですよ。96(歳)までおつき合いさせていただいたんだけど、その7年間、彼の役者ぶりを見ていて、90を超しても元気だからこういうことができるんだなと思って、それが目標ではありますね。蜷川(幸雄)さんの「リチャード二世」(15年)見ました?

林:いえ、見てないです。

市村:ご自分が車いすになってからの演出で、埼玉の高齢者劇団と若手の演劇集団の役者さんたち70人ぐらいを車いすに乗せて、その車いすで舞台を埋め尽くしてタンゴを踊らせたんですよ。

林:えっ、それはすごいですね。

市村:やっぱり蜷川さん、タダじゃ転ばないなと思った。だから僕も「こうなったら車いすに乗ってでもエンジニアの役やろうかな」って冗談で言ってるんです(笑)。

林:ああ、素晴らしいです。エンジニア役50年も、ぜんぜん大丈夫ですよ。

(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)

週刊朝日  2022年7月8日号より抜粋

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