では、そんな日本なのに、世界最高水準の技術を持つTSMCがつくばに後工程を中心としたハイレベルの研究所を作り、熊本には1兆円をかけて半導体の新工場を作るのは何故かと聞くと、「日本には後工程で高い技術を持つ企業がある。その技術を使ってTSMC用の先端技術を開発するためにつくばに出るが、成果は全部TSMCに帰属する仕組みらしい。熊本で作るのは、大して儲からない2~3世代も前の半導体だが、日本の自動車メーカー向けに確実に売れる。日本政府が巨額の補助金を見返りなしでくれるというので、それなら損はないというところではないか。経済産業省が大臣のメンツをかけて何が何でもTSMC誘致という姿勢だったので、足元を見られたんでしょう」という答えだった。
私が推測していたとおりだったが、それにしても政府の愚かさには呆れるばかりだ。
最後に、A氏は「すみません。少ししゃべり過ぎました。日本が馬鹿だと言っているわけではないので、気を悪くしないでください。」と深々と頭を下げた。私は苦笑しながら、「是非その話を偉そうに胸を張っている経産省に聞かせてください」と答えておいた。
※週刊朝日 2022年7月15日号から