実は若者政策は増えてきたと指摘するのは、同協議会代表理事の室橋祐貴さん(33)だ。
「各党の若者政策や若者の話を聞く機会は増えています。6月15日にこども基本法が成立、来年4月にこども家庭庁が発足するように、政治が子どもの意見を聞こうという空気感にちょっとずつ変わっています。各政党が数年前から、不定期でオンラインカフェのような若者の話を聞く場を開いています」
例えば、自民党は政権与党として低所得世帯対象の高等教育や3~5歳児の幼児教育・保育の無償化、待機児童数の削減を実施し、野党第1党の立憲民主党はコロナ禍で困窮する学生への支援を議員立法した。今回の参院選で野党第1党の座を狙う日本維新の会は、重点政策の一番上に出産無償化と教育無償化を掲げている。
結局は大人が決める
ただ、室橋さんはこうも指摘する。
「政党は若者の声を聞いているようで、そこまで重要視していないと思います。例えば、困窮学生への支援は若者の声を聞きながら進めましたが、それ以上に世論が盛り上がったから実現された面が大きいのではないかと思います。政策公約をつくるうえで、若者の声を聞くことがプロセスとして位置づけられているわけではないのです。本気で聞いているところまではいっていないと思います。学校と同じで、子どものためではあるが、結局のところ大人が考えて決めているんですね。だから、政党の青年部の担当者が代わったら、動きが止まるケースがこれまでもありました」
そしてこうも言う。
「気候変動や教育に関する政府の審議会や政党の部会には若者協議会は呼ばれますが、社会保障や雇用の公式の会議には呼ばれたことがありません。予算規模の大きな分野はまだ大人世代が中心です」
若者たちの声が届く政治を望みたい。(編集部・井上有紀子)
※AERA 2022年7月4日号に一部加筆
>>【前編】たかまつなな、若者の選挙への本音を分析 「自分たちの課題は政策に反映されない」