国税庁の調査では、06年に200万円以下の給与所得者が1千万人を超えた。それ以降、ほぼ毎年増え続け、20年は全体の約22%に当たる約1160万人になった。
放送大学の宮本みち子名誉教授(生活保障論)が説明する。
「01年に誕生した小泉純一郎政権による規制緩和によって企業は人件費を抑えられる非正規雇用を増やす雇用構造への転換を進めました。非正規雇用が絶対的にいけないのではありません。ただ、日本は海外の福祉国家と比べ、正社員と非正規社員の賃金や福利厚生の格差を大きくする差別的な処方を続けてきました。その結果、貧困層が増えたと考えています」
女性の割合多い貧困層
02年に約29%だった非正規雇用は21年には約37%まで増えた。年収(21年)は、フルタイムで働く正社員は約323万円で、非正規社員は約217万円と正社員の3分の2の水準にとどまっている。
貧困層は女性の割合が多いのも特徴だ。20年に約1160万人いた貧困層のうち、女性は約840万人と約7割にもなる。この点について、宮本名誉教授は女性が働く職種と男女間の賃金格差が関係していると考える。
「まず、女性が多く働く職種は小売りやサービス、外食、福祉関係など、他の業種より賃金が低い傾向にあります。男女間の賃金では日本は男性を100とした場合、女性は75.2と、先進国の女性の80から90と比べ、大きく開きがあります。政治の役割として中小企業への支援も必要。特に女性にとって、中小企業はもっとも身近な働く場。大企業が少ない地方では、男性の雇用の受け皿にもなっています。中小企業の生産性を高め、優良な雇用の場となるよう国が強力に支援していくべきです」
先行きが見えない中、老後を支える年金は国民の最大の関心事の一つだ。中でもフリーランスの悩みは深刻で、受け取れるのは「基礎年金」と呼ばれる部分だけ。額は、満額で月約6万5千円(21年度)。しかも現在の制度では、年金の水準は将来的に下がっていく見通しだ。
「財源の問題もありますが、基礎年金の水準を上げて月10万円はもらえるようにする。iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)のような、年金を補う老後の資産形成ができる仕組みも必要です。住宅問題も大きいと思っています。家賃が払えない人も出てくるので、公営住宅や空き家を活用した低家賃住宅の提供や家賃補助が必要です」(宮本名誉教授)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年7月4日号