迫害を受けた先祖からの信仰伝達は、枢機卿へと結実した。包容力に魅了される人が多い(撮影/MIKIKO)
迫害を受けた先祖からの信仰伝達は、枢機卿へと結実した。包容力に魅了される人が多い(撮影/MIKIKO)
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京都で開かれた星槎大学のオープンカレッジ。「私と潜伏キリシタン」と題して講演。禁教、迫害を耐え、復活する潜伏キリシタンの末裔として、先祖からの信仰伝達の精神性の高さを語った(撮影/MIKIKO)
京都で開かれた星槎大学のオープンカレッジ。「私と潜伏キリシタン」と題して講演。禁教、迫害を耐え、復活する潜伏キリシタンの末裔として、先祖からの信仰伝達の精神性の高さを語った(撮影/MIKIKO)
長崎の浦上で5月に行われた西日本地区の神父によるソフトボール大会。神父同士の交流を兼ねて長年続いている。何事にも手を抜かない前田は全力疾走し、再三ファインプレーを見せた(撮影/MIKIKO)
長崎の浦上で5月に行われた西日本地区の神父によるソフトボール大会。神父同士の交流を兼ねて長年続いている。何事にも手を抜かない前田は全力疾走し、再三ファインプレーを見せた(撮影/MIKIKO)
ミサでは、よく俳句を使って「説教」をする。「福音を五七五」で表現するのが自分の個性だという。この日は、新元号「令和」を入れ聖木曜日を祝す句も詠んだ(撮影/MIKIKO)
ミサでは、よく俳句を使って「説教」をする。「福音を五七五」で表現するのが自分の個性だという。この日は、新元号「令和」を入れ聖木曜日を祝す句も詠んだ(撮影/MIKIKO)

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 ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が、今年11月に来日する予定だ。ローマ法王の来日は実に38年ぶり。その補佐を、昨年枢機卿に任命された前田万葉が担う。日本人としては9年ぶり6人目。世界でも226人しかいないポジションだ。長崎県の五島列島出身。カトリック信者だった曽祖父は明治時代に迫害を受けた。母は長崎で被爆。平和への思いは人一倍強い。

「教皇様は、長崎か広島から核廃絶のアピールをしたいと言っていました。(核兵器を)使うことだけでなく、作ることも倫理に反すると考えておられるようです。どこまで発言されるかわかりませんが、もしかしたら、メッセージにその辺のことまで織り込むかもしれませんね」

 2018年12月。第266代ローマ法王、フランシスコに謁見(えっけん)した枢機卿、前田万葉(まえだ・まんよう)(70)は、核廃絶に対する法王の意気込みを感じ取っていた。核兵器の使用だけでなく、製造も否定する、17年に国連で採択された「核兵器禁止条約」に通じる考え方ともいえるだろう。

 世界中に12億人ともいわれるカトリック信者を擁するカトリック教会の総本山、ローマ法王庁(バチカン)。そこのトップ、ローマ法王が今年11月、日本を訪問し、被爆地・長崎と広島を訪れる予定だ。法王来日は、1981年のヨハネ・パウロ2世以来38年ぶり。法王はいつ、どこを訪問するのか。

「いろいろな所から、来てほしいとの要望がある。報道では具体的な日程が出ているが、いまははっきりとしたことは言えない」

 警備などナーバスな課題が多く、前田は慎重な口ぶりを崩さない。
 
 日本人として9年ぶり6人目の枢機卿。法王の言動は十数億人ものカトリック信者に大きな影響を及ぼす。その法王を除くと、カトリックの聖職者階級の最高位が枢機卿である。最高顧問として法王を補佐する。会社に例えるなら、枢機卿は世界的大企業の各支店長。かつ本社役員も兼務するというイメージだ。18年時点で、世界に226人。法王を選ぶ「コンクラーベ」の投票権を持つ80歳未満の枢機卿は約110人しかいない。

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