その女性が、夫が家で仕事をすることにより、その世話もかねて、今までより家事が増えているとしたら、なんとも悲しい。
目に見えぬ家事の大変さに気付いて、自分も手伝うとか、買い物や料理を担当するとか、後片付けや掃除をするとか、気が付かないはずはないと思うのだが、見て見ぬふりをしているのか。家事は女の仕事とすりこまれている男性は相変わらず多い。もしそうだとしたら一種のパワーハラスメントと言えないだろうか。
会社では、セクハラ・パワハラが減ったはずだが、一番大切なのは、家庭内。会社や人前でもっともらしくセクハラやパワハラ禁止を説くのに、自分の家庭では家事は相変わらず女の仕事ときめつけている男性がいかに多いか。まず一番身近な人についての考え方が大切であり、行動が問われている。
コロナによる在宅勤務が問いかけているものはさまざまある。
男も女も自分の行動が問われているのだ。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年7月8日号