著者は2007年から6年間、朝日新聞の特派員として中国に滞在し、幾多の機微情報を掴むことに成功した。しかしその後、大国としての確固たる地位を占めたこの国は、今やAIなどのテクノロジーを駆使した情報統制や監視の目を通じて、外国人記者の情報収集を容易に受けつけない鉄壁の守りを築き上げている。
アメリカとの覇権争いでますますプレゼンスを増している現在の中国を横目に、当時の取材手法などもあえて明らかにしたのが本書。
中国のステルス戦闘機開発、空母建造、ハニートラップも辞さない諜報活動、サイバー空間や宇宙への軍拡、北朝鮮との複雑な関係などをめぐり、時には危険きわまりない手段で著者が情報に直接アクセスするさまは緊迫感に溢れている。これからの中国を注視していく際の基礎認識が養われる。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2019年11月15日号