必要以上に痩せようとは考えていないが、適正体重の範囲内は維持したい。8カ月かかってやっと元に戻った体重を維持するには、毎日、体重を量って、口に入れるものや運動量をチェックしなくてはならない。めったにないことだが、私が基準にしている48キロから体重が減ると、御飯の量をやや増やす。50キロに増えたときは、まず甘い物を食べるのをやめて、基本的に日常的に食べている御飯の量は減らさない。ストレスを甘い物で発散しようとすると、後でツケが回ってくるのは痛いほどわかっている。若い頃は1キロ、2キロなんて、日数単位、あるいは1日のうちで減ったりしていたのが、還暦を過ぎると月単位である。それも8カ月かかるなんて、増えた体重を元に戻すのも壮大な計画になってしまった。

 友だちのなかには、スポーツジムで運動をして汗をかけば痩せるという人もいる。体を動かすと気持ちがいいし、運動の範疇に入るのかわからないが、体を動かすのは散歩と家事のみの私も確かにそうだろうと納得する。しかしそんな彼女も、ジム後の冷えたビールと餃子で、以前はプラスマイナスゼロだったのが、最近はプラスプラスになってしまい、困っていると愚痴っていた。

 ライザップに行くほどでもないが、あと3キロくらいは減らしたい。そこで深夜のテレビCMで観た、お腹に巻いてぶるぶると動き、ソファに座ったままでも脂肪が燃焼するという謳い文句の器具を購入してみたが、今のところ目立った効果はないと嘆いている。とにかく還暦過ぎた人間が、1キロでも2キロでも体重を減らそうとするのは大変なのだ。

「ビールと餃子はワンセットなのよ。ビールだけでも餃子だけでも悲しい」

 彼女は切なそうな顔をした。私はアルコールは飲めないが、体重を維持するために、甘い物の1粒も禁止といわれたらとても悲しい。かといっていつまでも減らない脂肪を体につけておくのかといわれると、それもいやだ。還暦を過ぎても口に入れるものを制限しなくてはならない。生きていくうえで何かをあきらめなくてはいけないのは重々わかっているが、これから食欲の秋が来る。人生は辛いものである。

※『一冊の本』2018年10月号掲載

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