Yさんが就職したばかりの時期は、ちょうどバブルが終わる頃。当時、自営業者の間には「年金なんてもらえるかどうかわからないから、払わなくていい」という風潮があり、Yさんも「そうだ、その通りだ」と考えていました。「いつ病院にかかるかわからないから」と国民健康保険には加入していましたが、年金はずっと無視していたのです。

 年金を払うより貯金したほうがいい――。当時の先輩たちの話をうのみにしていたYさんでしたが、「貯蓄があれば何とかなる」のは、預金金利が比較的高かった、就職したての頃の話。1990年頃は銀行金利が2%、郵便局の金利は3%を超えていました。その頃なら、確かに貯金だけでも老後は何とかなったかもしれません。

 Yさんは年金保険料を払うよりも貯めていこうと考え、自宅に年金保険料の催促状などが届いたり、電話で催促されたりしても無視を続け、全く支払いませんでした。

 単身のまま、「いつかは自分も独立したい」と思って働き続けているうち、周囲には「年金には入っておくべき」と話す人が多くなりました。しかし、Yさんは「今さら入っても25年の受給資格には満たないし、どうせそんなにもらえない」。そう思って加入することを前向きに考えず、今に至ってしまいました。

 2017年8月から、年金の受給資格は「10年以上の加入」で得られるようになりました。今加入すると、ギリギリその10年を満たせます。ですが、もらえる金額はそう多くはないと思え、まだ加入を迷っています。

●現在の貯蓄はたった1200万円弱 これから取れる老後の対策は?

「貯金さえしておけばいい」と考えていたYさんですが、現在の貯蓄は1200万円を切るほどしかありません。このまま仕事をやめて老後に入ると、たった数年でこの蓄えはなくなってしまうでしょう。できるだけ蓄えを切り崩さずに暮らすのが最善ですが、年金の受給を受けられないので、それも難しいかもしれません。

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