2015年6月25日、自民党の若手国会議員らが党本部で開いた勉強会「文化芸術懇話会」における作家・百田尚樹氏の発言も記憶に新しい。
懇話会の講師として招かれた百田氏はこんな発言をした。
「もともと普天間基地は田んぼの中にあった。周りに何もない。基地の周りが商売になるということで、みんな住みだし、今や街の真ん中に基地がある。騒音がうるさいのは分かるが、そこを選んで住んだのは誰や」
いずれも事実を無視し、ネットで拾ったであろう怪しげな情報を鵜呑みにしたとしか思えない。
普天間基地のある場所は戦前、宜野湾の中心地だった。役場があり、学校があり、市場があった。約9千もの人々が生活を営んでいた。「何もなかった」場所に基地ができたのではない。「何もかもあった」集落の人々が沖縄戦の戦火から逃れるために家を空けたところ、そこに基地がつくられてしまったのである。
「少し調べればわかるはずです。しかし学生たちの多くは発信力のあるユーチューバーの断片的な言葉だけで基地問題を学んだつもりになってしまう。そしていつしか基地問題への関心そのものを失い、真面目に語る人たちを敬遠し、忌避し、馬鹿にする者も出てくる」
最近では「基地反対運動に日当が出ている」「運動の背後には外国勢力がある」といった、おなじみの“定番デマ”をも、ネットの影響で信じ込む学生が増えているという。
佐藤教授はこれまで10年以上にわたって基地問題を考えるゼミを主宰してきたが、来年度はいよいよ「閉じる」ことを決めたという。学生の間では年々、基地問題への関心が薄まり、今年のゼミ生はわずか2名。ゼミの維持が難しくなった。積極的に基地問題を学びたいと考える学生は少ない。
将来に不安を覚えながら、だが、それでも佐藤教授は米軍基地の「内実」を語ることだけはやめないと話す。
「デマは歴史を壊す。笑われて済む問題でもない」。そして──語り続ける限り理解を示してくれる若者も生まれるのだという信念も持っている。