決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦に敗れた後、スタンドに一礼する森保一監督
決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦に敗れた後、スタンドに一礼する森保一監督

 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会が閉幕した。日本は強豪国ドイツとスペインを撃破という快挙を成し遂げた。元日本代表・福田正博さんは森保ジャパンの健闘をどう感じたのか。2022年12月26日号の記事を紹介する。

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 目標のベスト8には届きませんでしたが、W杯優勝経験のあるドイツとスペインに勝ち、世界を驚かせた意義は大きいでしょう。しかも、日本代表のW杯史上初めての逆転勝利。運ではなく、実力でベスト8に手が届くところまできたと感じました。

 サッカーとは、相手と状況に応じて戦い方を変えなければならないスポーツです。これまでの日本は、指示通りにきちんと動けても柔軟性に欠けるところがありました。それが今大会ではシステムを二つ(3バックと4バック)使いこなすことができた。戦い方の幅が広がったことが、結果につながりました。

 代表メンバーのうち、海外でのプレー経験者は26人中22人で過去最多。強豪国を前に恐れることも、背伸びすることもなく、等身大でプレーできるメンタルが備わっているチームでした。

 1次リーグ第2戦でコスタリカに敗れたのは、力が拮抗(きっこう)している相手だったからだと思います。やりにくいんですよ。ボールを持った時に「勝たなきゃいけない」という意識が強く出すぎてしまう。むしろ、失うものがない格上の相手のほうが、自分たちのプレーに集中できるのでやりやすい。勝負事の難しいところだと思います。

 僕が代表メンバーからMVP(最優秀選手)を選ぶとしたら、主将のDF吉田麻也選手(34)です。地味なポジションですが、全試合フル出場し、常に今なにをしなければならないかを考えて動いていました。その吉田選手が決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦で、PK戦の最後のキッカーになってしまったことは酷でした。4年に1度の舞台で延長を含めた120分を戦ってから、平常心で蹴れる選手なんていません。重責を背負い、よくやったと思います。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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