ヤマトホールディングス(HD)子会社の引越し業「ヤマトホームコンビニエンス」(YHC、東京都)が、一部の企業に対して荷物量を水増しし、割高な金額を請求していたことがわかった。
【資料】水増しされた請求書と、本当の荷物量が書かれた社内文書はこちら
不正の実態は、四国法人元営業支店長の槙本元さん(65)の告発で発覚。2日には東京都内で記者会見を開き、その手口を詳細に証言した。槙本さんは「水増し請求は組織ぐるみで行われていた」と話している。
日本を代表する運送会社であるヤマトのグループ会社でなぜ、水増し請求が横行していたのか。告発をした槙本さんに話を聞いた。
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「私が営業して、契約をいただいた顧客に水増し請求してることが、許せない」
槙本さんは取材中、何度もこの言葉を繰り返した。
槙本さんが引越し料金の水増しに最初に気づいたのは、2010年。東芝系列のある企業が、愛媛県と神奈川県で従業員を異動させる時に引っ越しの仕事を引き受けたときだった。社内で保存されていた資料から、愛媛県のYHC支店が荷物量を水増しして請求していることを発見。槙本さんは、担当社員に見積もりをやり直すよう注意した。その社員は当初、槙本さんの注意を無視していたが、最後は誤りを認め、32件中31件で水増しの見積もりを出していたことを認めた。
この時、この社員は槙本さんに対してお詫び文を書き、「今回の不始末はご容赦くださいますよう伏してお願い申し上げます」と反省の言葉を述べていた。
だが、これですべてが終わったわけではなかった。翌11年にも、同じ企業の引っ越しをYHCが請け負った際に水増しが行われていた。槙本さんは言う。
「この時は東京本社の内部通報窓口や、四国地域を統括する支店にも通報しました。その結果、YHCは被害を受けた企業に謝罪し、過剰に請求した419万円を返金しました。ところが、この後も水増し請求がなくなることはありませんでした。私が若い社員に『こんなことをやったらいかん』と注意しても、『誰でもやっているではないですか』と反論されてしまうような状態でした。もう、水増し請求は当たり前になっていました」