●細切れ肉ではなく「ステーキ」がいい理由
「なぜ、ステーキがよいのですか? 細切れ肉ではダメなのですか」
という声が聞こえてきそうです。
肉とは、私たちの本能に眠る野生性を呼び覚ましてくれる食物だと考えています。
私たち人類も、約1万年前までは、野生の動物と同じように動植物を狩猟して暮らす自然界の一員でした。しかし、約1万年前頃から農耕の歴史が始まります。欧州で農耕が始まったのは約9000年前、日本に伝来したのは縄文後期(約4000年~5000年前)でした。本格的な農耕社会に入ったのは弥生時代の紀元前300年~紀元後300年であり、今からわずか2000年前後のことなのです。
農耕社会に入ると、支配階級と被支配階級ができ、時間とお金に余裕のできた支配階級者は生活を豊かで便利にするために、文明や文化を発展させました。700万年という人類の歴史に対し、わずか1万年から数千年のうちに、ジャングルや草原といった生活環境を「快適で効率的で清潔な社会」に、人は変えてきたのです。
ところが、落とし穴がありました。私たちの体を構成する60兆個もの細胞は、1万年前から変わっていないということです。私たちの体の進化は、文明の発展のスピードについていけません。細胞はいまだ自然界での衣食住を求めているのです。
細胞は変わらないのに、衣食住という環境が激変すると、どんなことが招かれるでしょうか。アレルギー性疾患や自己免疫疾患などの免疫の誤作動が起こす病気や、がん・心筋梗塞・脳梗塞・糖尿病などの生活習慣病、うつ病などの心の病は、昔はほとんどなかった病気です。これは、現代の生活環境と私たちの体がうまく適合できていないことを表していると、私は考えています。
病気を防ぎ、長寿を極めるには、自分の中の野生性を取り戻すことがまず必要です。ステーキという肉の原型がわかるワイルドな食べ物は、肉食を好む「人間」という野生性を呼び覚ましてくれるパワー食だと私は思っています。