タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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化粧品を買いに原宿・表参道まで行ったら、順番待ちでお店に入れませんでした。表通りの高級ブランド店はどこも行列。感染症対策で人数制限をかけているとはいえ、物価高で消費の冷え込みが報じられているのとはかけ離れた活況ぶりです。並んでいるのは若いアジア系の人が多く、聞こえてくる言葉もさまざま。ブランドの紙袋をいくつも提げたおしゃれな若者たちを見ると、かつて海外で買い物旅行をしていた日本の若者もこんな感じだったなと思い出されます。
今度は愛用の香水を買いに、所用ついでに銀座の百貨店へ。いつも行けばたいてい在庫があったのに、今回は欠品中。聞けば、海外のお客さんが日本で買う方が安いからと大量購入しているのだそうです。確かに目の前では、東南アジアからの旅行者と思しき女性たちが新作を複数購入。私の愛用品の在庫は他店に日本で最後の1点があるのみでした。観光客の戻りを実感するのは東京だけではありません。先日訪れた宮崎県の高千穂町でもシンガポールや中国からの旅人と出会いました。最盛期に比べればまだまだだそうですが、決して交通の便の良くない高千穂でも海外客が戻りつつあるのは、長らく冷え込んでいた観光業界にとっては光明でしょう。今はむしろ人手不足で悩んでいるというのも納得です。