去年の夏は暑かったが、今年の冬はとんでもなく寒い!なんだか、ずーっと異常気象が続いているような気分である。もう何が正常で何が異常かわからない。
天気の変化を知らせてくれるのが雲だ。たとえば西の空にあらわれた黒い雲が、雨のきざしであるように。
『雲を愛する技術』は、雲ができるメカニズムや細かな分類を解説した本。写真やイラストをふんだんに使い、恋愛にたとえてユーモラスに語る。著者の荒木健太郎は気象庁の研究官で雲の研究者。
たくさんの水滴や氷の結晶が集まって大気中に浮かんで見えるのが雲である。どんな雲ができるのかは大気の状態によって決まる。逆にいうと、雲をよく見れば、大気の状態を読み取ることができる。
本書の第2章では、雲をその姿や高さ、発生過程などにもとづいて分類する十種雲形をはじめ、さまざまな雲の名前や特徴が紹介されている。どんな雲にも名前がある。これまでただ「雲」としてしか認識していなかったものが、「毛状巻雲」「波状巻積雲」「乱層雲」といった名前を知ると親しみがわく。
必読は第4章「雲の心を読む」である。大雨や竜巻、落雷などを引き起こす「積乱雲」のなかまたち。なかでも内部に複数の雲を抱え込んだ「マルチセル」や巨大な「スーパーセル」などは危険信号である。スマホの天気アプリだけでなく空もよく見よう。
なお、雑誌などでもたびたび話題になる「地震雲」であるが、雲が地震の前兆になることはない、と著者は断言する。地震雲伝説が消えないのは、「雲愛の普及が足りていないから」とのこと。
※週刊朝日 2018年2月16日号