空気が読めない「困った人」には職場でも学校でも、そこそこ遭遇した。だけど「困った人」は、本当に「困った人」なのだろうか。

 この本に描かれた8人の物語にふれると、そんな疑問がわく。「言葉がもったいないからしゃべらない」とか「普通ってどういうこと?」とか自分でも考えたことがあった。共感よりも身に覚えがありすぎる。「困った人」と自分の差など、あったとしてもごくわずかなものなのだろう。

 描かれている人物に奥行きと実在感があり、丁寧な取材も、視点を巧みに移動させる筆力も素晴らしい。だが、自身もアスペルガーである著者の「理解して欲しい」と願う熱量こそがこの本の背骨であるように思われた。読後に覚えた「困った人は私の中にもいる」という確信は、爽快な発見だった。

週刊朝日  2018年1月19日号